量子力学というものがある。20世紀の確立した、今の科学技術の基礎理論と言ってもいいものですが、その前時代、19世紀当時、古典論と呼ばれる、(古典)力学、電磁気学、熱力学(古典統計力学)で物理学はほぼ確立していたと聞く。
そのほぼの部分の未解決問題をクリアすれば、物理学で追求することがなくなるとも言われていた時代(ちょっと言い過ぎかな、でも、そういう風潮があったそう)。その残りの未解決問題を巡り、プランク、ボーア、ハイゼンベルグ、シュレーディンガー、あとアインシュタインなど(数え上げればキリがないな〜)、そんな多くの物理学者が苦悶して確立された量子力学。その量子力学と古典論の違いは「波と粒子の2重性」を認めるか認めていないかにある。認めたら、量子力学の考え方。認めないのであれば古典論。
ただし、量子力学は古典論を内包している。すなわち、量子力学で物体の運動などを記述することができる!!それは以下の方程式で表現可能なはずだ!!

この方程式をシュレーディンガー方程式という。その視点で考えたとき、どのように考えられるのか気になって学部1回生の時に、本を探して調べたことを今回の記事にしようと思う。つまり、
この量子力学から見た古典力学、特に自由落下について考えてみよう、そんな記事です。
1. 自由落下 〜古典力学ではどうなる?〜
さてまず、古典力学の範囲で自由落下運動について考えてみよう。これは、高校物理の範囲内での説明可能だが、後のことを考えて、微分方程式で運動方程式で記述する。まずは運動方程式は以下のように定義される。(1次元の場合)

は質量、
は外力(重力)、
は物体の位置の座標、
は時間を表すパラメーター、
は位置ポテンシャル。 自由落下の場合は、外力の大きさ
であるから(よくあるように空気抵抗や摩擦などは考えない)、加速度は
であり、落下方向を
軸の向きとして座標を設定すると、運動方程式は以下のようになる。

また、以下の図のように縦軸方向へ物体は落下する。横軸は時間の経過を表す軸。高校物理でお馴染みの等加速度運動(時間のパラメーターに対して2次関数)となる。

図1. 等加速度運動
簡単のため、物体の回転や大きさ、空気抵抗などは無視しているが、ここでは重力加速度で等加速運動をしていることがわかる。古典力学ではこのように時間ごとで局所的に物体の運動を記述することができる。
2. 量子力学と古典力学の考え方
量子力学と古典論の違いは「波と粒子の2重性」にあると書いたが、そもそも波と粒子は異なるということはどういうことか?それは粒子と波の取り扱い方が異なるから。空間に局在化して取り扱うのを「粒子性」、空間に遍歴して取り扱うのを「波動性」という。

図2−1. 波動性(イメージ)と粒子性(イメージ)
波は空間上に広がっていく、粒子は空間のある一点のみを考える、この両極端な考え方は古典論では完全に別物として考えられてきた。が、量子力学で取り扱う粒子は波として取り扱われる。ただ、落下運動している物体を波として捉えると、非常にイメージしにくくなる。どのような世界となるのかがよくわかりにくい。その為、少し工夫、もとい発想転換してみる。それは、波を収束させて波束というものに考え直して対応付けする。

図2−2.波束との対応付け
つまり、波束を作り、その運動を考えることで量子力学上で古典力学の内容を考察することができる!!
さて、詳しく見ていこうか、、、
※ここからの記事の内容は和田純夫著の『なっとくする量子力学の疑問55』の内容を基に私なりの解釈で記述しています。
3.波束の作り方
さあ、波束を作っていこう。でもどう作ればいいのか、、、わからん!!
そのため、波束の前に波について考える。ここでは1次元の波を考えよう。

は波長、は波数であり、の形状はコサイン波である。

図3−1.波の描像
これを波数でと を用いて、異なる波数の波を足し合わせ(重ね合わせ)を行なう。


,
として変数を書き換えることで式を見やすくしている。特にと の値がほとんと同じであるとすると、以下の図のような振る舞いをする。

図3−2.波の重ね合わせ(例)、実践部がの波、波線部は重みの寄与
図3-2では、波線部(
)はゆっくりと波打って変化し、実線部(
の寄与)速く波打っていることがわかる。また、波線部はいわゆる重みとして役割を持っており、実線部の振幅が大きくなったり、小さくなったりする。 つまり、波数の異なる波を足すことで波の形状を変化させることができる(波の重ね合わせ)。このことを利用してうまい具合に波を重ね合わせすることで任意の図を描くこともできる(細かいことは省略するが、詳細はフーリエ変換で検索すればいい)。なので、この波の重ね合わせを用いて波束を作ってみよう。
上記で描いた図3−2では足す波の数が少なく、図2−2のような波束は作れないので、無限個の波を足し合わせる必要がある。そのため、積分を用いて以下の通りに表現できる。(計算結果だけ示す、フーリエ変換の公式で調べてみよう)


は重みであり、波の大きさを表すが、前述の
の役割と同じ。ではなぜこの様な重みをつけたかというと、図2ー2の形状にするため。この重みの関数はガウス関数(正規分布)と呼ばれるもの。積分を実行した後の結果からもわかる通り、
という因子がくっ付いてるが、こちらも同じくガウス関数になる。また、
のガウス関数はが大きいほどは幅が小さくなる特徴がある(図3−3)。

図3ー3.ガウス関数
では実空間の位置を表すパラメーターであるに対してはどうか?この場合、
の幅が小さければいい。今度は指数部の逆数にが存在しているので、幅は2√になる。すなわち、波束をより質点のように扱うようにするにはが小さい方がいい。要はピーク位置を重心と捉えたい為、ピーク位置に対して対称性があり、幅が小さければ、それ以外が0と見なせる(特に無限遠)ので都合がいいからガウス関数を重みとして用いている。後は、指数関数のため微積分が計算しやすい利点があるからとも言える。

図3−4.波束の作成 オレンジ部が波打ってる部分、黒(青)部は外観形状
4.波束の時間的変化
さて、波を用いて質点の代わりとして対応できる波束を考えた。今度はその波束が時間変化でどのように変化していくかを考える。その為には、波束のピーク位置が時間に対してどのように変化するかを考える必要がある。そこでピーク位置を<>と表し、以下のように定義する。


今回の波束()には前項ではなかった、時間が含まれるので、パラメーターとして書き加えた。また、後に出てくる積分計算をしやすくすることを目的にオイラー公式を用いて三角関数の部分を指数関数の部分に書き換えた。オイラー公式は以下の通り、虚数と三角関数、指数関数を結びつけた重要な公式である。

要するに、
は前項のの実部のみを記載した内容となり、述べていることは同じことを示す。は角振動数と呼ばれる物理量で、振動数に2πを掛けたもの。要するに、1/2π秒を単位として何回波が振動しているかを表した量である。つまり、
は波の時間的な変動(振動回数の変動)を表す。前項までは=0の場合を考えていたことになるが、≠0の波束の振る舞いを考える上で重要となる項である。<<1ならば、波束はピーク位置に集中して他の部分は0と見なせるから、結局は

と近似できる。要するに、波束の位置に関する時間変化はピーク位置を追えば良いことがわかる。さて、次にピーク位置を時間変化を見る為に時間のパラメーターで微分をする。これでいわゆる、物体の速度を示した量となる。

とはいえ、今の条件ままで解くのは厳しい。それは波束を表す式、を作ったが、その関数の性質について何も考えていないから。そこで早い話、量子力学の考え方で物事を進めているかを確認したいので、が量子力学の基本方程式として確立しているシュレーディンガー方程式を満たすことを確認する。満たすのであれば、上記のは量子力学の考えに則ってよいことになる。さて、ここでおさらい、シュレーディンガー方程式は以下のような式であると最初に書くだけは書いた。

はポテンシャル、は質量、
はディラック定数である。確認のためなので、ポテンシャル=0として代入すれば両辺が一致することはすぐにわかる。(ポテンシャルが0ということは外力が働いていない状態のため、自由粒子として扱っていると考えられる。)よって、3節で考えてきたは量子力学の考えに則っていると判断できる。この時、には名前があり、波動関数と呼ばれる。
さて、このシュレーディンガー方程式は時間の一階微分を空間(位置)の2階微分に置き換える式としても見ることができる。その為、ピーク位置を時間変化の式を計算するのにシュレーディンガー方程式を利用する。すると、部分積分でごちゃごちゃやって計算することができるようになる。そう、後は部分積分の繰り返しになる。嫌になる…が、やってみよう。
(以下の通り、赤斜線は0または打ち消しとなる部分を示す。※波動関数は無限遠方では0となる性質があることに注意。また、は0としなくてよい。は複素共役を示す。)

ここで、シュレーディンガー方程式の複素共役となる、以下の式を用いていることに注意。

さて、折角なのでピーク位置の2階微分も考えてみよう。こちらはいわゆる物体の加速度を示した量となる。やり方は先ほどと変わらず、しかし、途中に3階微分が出てきてドキッとする。

3階微分については第1項と形を見比べてみて、部分積分を繰り返したら、同じ形になって消えるのでは?と思えたら勝ちである。実際、以下の通りに計算を進めることができる。
(※波動関数の一階微分も同じく無限遠方では0となることに注意。)

よって、計算結果は以下の通りとなる。

ここではは2変数関数ではないことに着目して、をに書き直している。
うん?、あれ、これはどこかで見たような…、!。運動方程式と形式が似ていないか?
古典力学の運動方程式は以下の通りである。

ここで、

と書き直すと(ピーク位置の定義と同じ考え方)、ピーク位置の2回微分は以下のように記述できる。

やっぱり、運動方程式と形式が一致することが明確にわかる。
この結論が「エーレンフェストの定理」と呼ばれる。要するに、物体が量子力学で表される波束で表現した場合において、その波束のピーク位置を時間変化で追うと、それは古典力学の結果と一致する。
つまり、この定理により自由落下の運動を量子力学的に考えることができる裏付けとなる。
※ 今までの話は1次元の場合で考察してきたが、3次元の場合でも成り立つ。
5.自由落下を量子力学的に考えよう
これまでで古典力学の内容を量子力学で扱って問題ないということがわかった。
さて、前提話はここまで。ようやく本題。ここから自由落下に関して量子力学で考えていく。
自由落下の系ではハミルトニアンは以下の通りに記述できる。

ここでは1章でおこなったのと同様に落下方向を軸の向きとして扱う。は運動量、量子力学の要請によって、以下のように定義されているため、上式はその内容を代入している。

さて、ではまず、シュレーディンガー方程式を記述する。

今までと同様には波数の波の重ね合わせで以下のように記述する。
は波の各時刻における重み付けする適当な関数である。(但し、無限遠では0となるものを選ぶ必要有。)

これをシュレーディンガー方程式に代入してに関する微分方程式に書き換える。シュレーディンガー方程式の右辺はただ代入するだけなので、左辺の部分を考えればよい。

{}内のをに変換したいので、無理やり感があるが、
が微分で形式が変わらないことを利用する。

結局、最後は部分積分を行うと、両端の関数が交換できてしまい、シュレーディンガー方程式は以下のように書き直せる。

後はこの式を解けばいいが、ここからは少々、テクニカルである。少なくとも先見の明がいるので、理屈は深く考えず、流しで見てもらえればいい。
まず、
と置いて、
を以下のように定義し直す。

シュレーディンガー方程式に代入して、
からの関数に書き換える。このようにすると、解く上で邪魔だった2次の項が消えるので、よりシンプルな微分方程式に変換できる。案の定、右辺は代入するだけ、左辺の変更のみを考えると、以下のように計算ができる。

よって、シュレーディンガー方程式は以下のように書き直される。

とおいて、見通しのよい波動方程式の形式にしている。この波動方程式はよく知られている方程式で、一般解は以下のように適当な関数を用いて記述できる。

この関数の1番の特徴は=0で以下の式が成り立つことである。

すなわち、以下が成り立つ。

要するに、関数の形が単位時間毎にの割合で軸方向に増加することを指している。の次元は運動量と同じ次元のため、時間が経つにつれて運動が激しくなること、つまり加速していることを示している(図4ー1)。これについては、今回、軸を落下方向にとっているので、今の考え方に合っている。ここで、一般解
の中で
軸方向とは反対方向に進む方の項を無視、すなわち、
とすれば、最終的には以下の性質を持つ関数が求めていた答えとなる。

ただし、
である。

図4ー1.
の時間変化 すなわち、運動量の変化を示す。
さて、本来欲しかったのはであるので、上記の結果を代入していく。まずは〜がついているから求める。

ここで、
とする。
よって求めるは以下の通りとなる。

後は具体的に計算する為に、
とガウス関数になると決め込んでピーク位置の計算を進めればいいが、参考としている著書ではもっといい方法が載っているので、そちらを用いる。考え方は至ってシンプルで、
1.
により、波束の幅が小さい(>>1)ならば、
付近以外では
での積分は0とみなせる
2.
は振動項のため、
によって
が変化すると
の符号は変わるから
で積分すると打ち消し合うが、
によって
が変化しなければ
の符号が変化しないので積分が0にならない
この2つの条件をもとに考えればいい。ここで
が
によって変化しない条件とは、すなわち、振動項
が
によって変化しないということを意味する(
を
で微分した結果が0ならば、
だとわかる)ので、その上で
近傍で満たす条件を課せばいい。すなわち、

を満たせばよい。 まず、左辺を計算すると、
(とが中身が分かりにくいと思うので、かなり詳細に記載した)

と置いて、この定数は次元を調べれば速度と同じ次元だと一目瞭然でわかる。右辺は0なので、位置のパラメーターについて解くと、

これは初期条件に関して
(つまり
),
とした際、1章で話した内容(古典力学の内容)と同じ結果が量子力学の考え方だけで導出できたということである。
6.まとめ
古典力学の扱う運動で一番シンプルな自由落下について、量子力学ではどのように記述されて結果が出てくるのかを解説した(自己満足レベルで)。その中で波として捉えた際の物体の運動は、波束というものと対応付けされて考えることができることを述べた。また、古典力学の結果は量子力学から説明することができることを保証しているエーレンフェストの定理についても簡単にだが触れた。3次元の場合であれば、グリーンの定理から証明されていることが多いが、こちらは余裕があったら記事にしたいなと思う。
7.参考文献
・専門書や書籍など
和田純夫著 『なっとくする量子力学の疑問55』
・グラフや挿絵の引用先など
GeoGebra リンク先:https://www.geogebra.org/graphing?lang=ja
受験のミカタ リンク先:https://juken-mikata.net/how-to/physics/ziyuurakka-kousiki.html
T_NAKAの阿房ブログ リンク先:https://teenaka.at.webry.info/201607/article_22.html
終わって一言(完全な独り言)
長かったあああああああああああ!!!!
1月から書いていて、1ヶ月くらいで書き終わるかなと思ったら、4月末!?
文章を書くって、ほんと大変だよね…
まあ、数式を書くのと図示も大変だった。それはそれでも、もっと早く書けるようにしたいな〜。
では、間違いや指摘、ご意見あればコメントください!待ってます!!
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